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ガシャ、と明らかにベランダから聞こえた音にビクリと体が跳ねた。
忌ま忌ましくも心臓が最高まで脈打つ、何かが風で柵に当たっただけだと思うが。
思えない、彼。
「…………馬鹿馬鹿しい」
幼い子供であれば泣き叫ぶだろうか、いや、ナギは昔から恐怖感で泣き叫んだ事はない。
もし本当の危機ならば、泣いている内に死んでしまう。
なにより、彼は親に散々な暴力は受けたが助けられた経験などない。
もう一度、耳を済ます、目を開いたままで。
ベランダに集中した聴覚は、それからしばし時間が経過しても遠い犬の鳴き声と車の音しか拾わなかった。
ゆっくりと息をついて、固まった体から力を抜く。
「うう…」
身じろぎしたミナトが迷惑そうに眉を寄せ、思ったより強く抱きしめていたのだと気付いた。
「ごめん」
小さく謝り、ナギの目はゆっくり閉じていく。
強い睡眠薬が彼を否応なしに眠りに落とした。
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