4人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
翌日、昼前に起き上がった彼はミナトと買い物がてら外へ出ていく。
狭い階段を降りる寸前、見渡せる山を見つめた。
「…どうかした?」
訝しむよう下から見上げた彼女に、いや、と被りをふる。
山は至って穏やかに見えた、木々が揺れ動く様も気持ち悪さを感じさせない。
昨夜のはやはり気のせいだと、ナギはしかし引っ掛かりを感じてる頭を二、三振る。
下まで降りて道路を踏んだら、目の前に車が停まっていた。
隣の部屋に住む、ミナトの友人だ、車の中からこちらに気付くと窓をあける。
「久しぶりと、はじめまして」
気さくな笑顔の若い男。
名前は聞いても覚えないナギの性格を聞いていたらしく、彼はタケとだけ名乗り、幾分年下のナギにもそう呼ぶよう言った。
さして興味も持たないナギは気のない返事を、しかし笑顔で返す。
「じゃあまた今度」
タケが軽く手を振り、車を荒々しく発進させた。
「ふう」
ナギは他人が苦手で、ため息もやや苦い。
最初のコメントを投稿しよう!