安定剤と警察

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安定剤と警察

奮えだしそうな体を無理矢理に動かして、ゆっくり部屋へ後ずさった。 後は無意識に携帯で110と打ち出し、口は無機質に動き、ベランダから目を離し待ち続ける。 警察を。 理由は簡単だった。 これは殺人、それもとびきりブッ飛んだ異常さの。 「何でだ」 何故、自分は無事なのか。 開けたままのベランダから入る、嫌な風、思考をめぐらせるナギの目はフローリングを見つめた。 「…あれは…」 脳裏に焼け付く赤い光。 獣のような、声とそれは確実に瞳の赤だった。 何、がいたのだろうか。 されど。 「…信じてもらえないだろうな」 全身を駆ける汗が僅かにひいていく、外からは喧しいサイレンが近付き、マンションの下で停止していた。 直ぐさま部屋のドアが叩かれ、青ざめた顔でナギは警察を向かえ入れる。 「ベランダです…」 虚ろな目と血の気のひいた肌、彼の様子を見た警察は彼の肩を軽く叩く。 三人の警察官はナギの顔から異様な寒気を感じたが、気付かぬ努力をしてベランダへ向かった。
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