赤い眼と死体

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赤い眼と死体

布団に潜り込む、睡眠薬を飲み下し、並んで目を閉じた。 夜でも電気を消さない彼の、警戒が常日頃から強い長年の癖。 それは眠る為であれ目を閉ざせば、耳が異様に聞こえるという事。 隣からは寝入りの寝息が響く、テレビからはくだらないショッピング、そして。 「………っ」 ナギは突然、目を思いきり開いた、跳ね上がった心臓が煩いくらい耳の奥で脈動する。 身体は固まっていた。 しかし耳は、しっかりとその音を拾ったのだ。 『カロロロロロ…』 重く響くようで、軽やかな、生き物の声。 聞いた事などない、ふとカーテンの向こうが気になったが身体は動くなと硬直したまま。 左腕だけでミナトを抱き寄せ、ベランダから僅かでも遠ざけて守るように包む。 気のせいか、気のせいだ、ナギは自問自答する。 落ち着け、と心臓に願いつつ、寝入りの夢に混じった幻聴だろうと自分に言い聞かせた。 だが。 脳は現実だと言う。
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