プレリュード

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 人類史上、最大多数の国が参加した第二次世界大戦の終結から半世紀以上が経ち、小国の内戦や紛争は絶えなかったが、それでもかつてのような戦争は無いと思われていた。  何故ならば、かつての戦争は悲しみが多すぎたから、人々は戦う事の悲しさを学んだから、だからもう二度とあんな事にはならないように努めてきたのだ。  戦争の無い世界――。それは人類の大きな目標なのかもしれない。だが、時という運命においては、そんなことは有り得ないのだ。人類はこの限りある空間に誕生したその時から常に戦い続け、生き延びてきた種族だ。その遥か古代の破壊衝動は先祖からDNAレベルで受け継いでいる。つまり、人が戦いを止めるとき、それは人類が滅ぶ刻以外にない。  戦争、平和、革命。この三拍子は止まること無く回り続ける。時代が廻っていくのに連動して。  2012年、翌年を待たず、戦争は始まった。イラク戦争の終結により世界規模の戦争は免れたと思われていたが、実際には世界情勢は悪化していた。  日中関係の悪化。ロシアとの領土問題。中東諸国の内戦の激化。独自の動きを見せる北朝鮮。それに呼応するかのように軍備拡張を謀る米国。平和は徐々に影に飲まれていた。  口火を切ったのは米国だった。彼の国が危険視した国への軍事介入――。  その行為に反発した諸外国との間に戦争が勃発した。  日本はもはや米国の属国と言ってもおかしくない為に、戦争参加は余儀なくされていた。  日本と友好関係にあったオーストラリアは中立を貫き、英国と独国は戦時中に相互の領土への侵略行為を禁ず、という条件付きで米国と同盟を結んだ。  対するはロシアや中国、トルコといった軍事大国である。  当初予測されていた短期決戦はあっさりと裏切られ、戦争は膠着状態のまま、1年と2ヶ月が過ぎた――。  そして、米国はこの状況を打破すべく、日本との共同作戦を実行に移す。 『オペレーション・ミラージュ』  自ら考える事を止めた国は、何も理解しないまま再び武器を手に取った。  もはや、この国に未来はない――。
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