1,オペレーション・ミラージュ

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  2014年1月7日  日本シベリア方面軍は寒冷地戦闘を目的とした部隊で、悪天候の下でも十分な戦闘能力を発揮できるように訓練された部隊である。  目的は巨大な軍事力を長年保持し続けた大国、ロシア連邦の首都モスクワの制圧及び占拠である。ヤロスラブリというモスクワの北にある都市に日本軍は駐屯していた。今回のモスクワの制圧はアメリカ軍との共同作戦で、アジアの一番厄介な国であるロシアの首都を奇襲で陥落させ、後の戦いのために消耗を抑える作戦だ。  エリート揃いのロシア軍に奇襲が容易に成功するわけがないのは作戦を立てたアメリカ上層部も認識しており、今回の奇襲は敵の裏を掻いたものだった。  その作戦は電撃的に行ってこそ、成果が得られる。待機時間が長ければ長いほど敵に察知にされる可能性も高まっていくわけで、両軍の準備も速やかに行われた。  物資の補給部隊はその日の昼に到着し、陸軍の準備も完璧で指示さえあればいつでも出撃できるようになっている。  翌日午前3時40分。陸軍は駐屯地であるヤロスラブリを出発してモスクワボルガ運河沿いに南下して待機。空軍の出撃準備が整い作戦開始の指令が下りるまでの間、物音一つ立てずただ静寂な夜の闇に溶けていた。  また、夜といっても雪原と化しているロシアの大地に、陸軍の通常の迷彩服は目立つため、白色の軍服に身を包んでいた。  陸軍がヤロスラブリを発ち、およそ一時間後の午前4時50分、待機していた兵士たちの耳に付けたインカムに、指令部からの通信が流れる。  『総員戦闘配備……。オペレーション・ミラージュ、開始……』
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