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ACT.1 青天霹靂
始まりはいつもそうだった。
茜色の空の向こうにありもしない理想郷を願った。その瞬間の一部始終をこの身に刻んでただひたすらにもがいてたんだ。
丁度一年前。彼は、何の便りも寄こさないままこの町を去っていった。
彼に積み重ねられた罪はどれほどに重いのか、その時初めて気付いたんだ。
それ以来、私はこの御上市でどうにも詰まらないマンネリ化した日常を過ごしていたんだ。
黎明も過ぎぬ間に広がる薄霧の中、町中を日の光が色取り取りに彩っていく。霧で出来た雲海は、微かに朝の予兆を匂わせる。
道路、ビル、住宅街。その各々が朝を迎える度にそれぞれの色に染まり、それは夕暮れと共に常夜に沈む。
それはごく当たり前でこの世の日常、どこにだってある景色だった。
午前零時を境に一日という習慣単位が入れ替わり、また新しい一日に興奮する人間もいれば、勿論その繰り返しに疲れきった人間もいた。
しかしその日常も、運命という容赦もない神の試練によって軽々と覆される。
そう、始まりはいつもそうだった。
茜色の空の向こうにありもしない理想郷を願った。その瞬間の一部始終をこの身に刻んでただひたすらにもがいてたんだ。
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