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列を連ねたカラスたちが我が家へと帰路を辿る。沈みかけた太陽は雲に隠れ、ぼやけた灯が隙間から射し光る。
「ねぇ凪ちゃん?」
公園に植えられた木々の葉がそよ風にざわめく。
「藤崎くんの事なんだけどさ……」
公園のブランコに二人の学生。ゆらゆら揺れて会話を交わす。
「私の事どう思ってるのかな?」
一人の少女が一方的に言葉を並べ、もう一人の少女に尋ねる。
ここ最近の口癖になっている事にも気付かない問い掛けた少女は、何気なく空を見上げる少女の返答を待つ。
「どうって……ね」
髪を二つに束ねたツインテールの愛(まな)は、愛想の無い返事に頬を膨らませて隣に座った少女の顔を見つめる。
「何よ、その呆れたような顔は……」
怒った風を装うが、隣の凪咲(なぎさ)はそのままの調子で言葉を返す。
「うん……そのね、今さっきまで誰とどうしてた?」
他愛もない会話が二人の時間を刻んでいく。
「凪ちゃんと公園入って……」
「その前っ!」
声を荒げて愛の言葉を遮る。途端、強風が木々を吹きさらして過ぎ去った。
「えーっと」
両の人差し指を頬に押し付けて、満面の笑みで続く言葉を紡ぐ。
「藤崎くんとイチャイチャ……ぐっ」
愛の頭頂に凪咲の手刀が振り下ろされた。
「いったーいっ」
ツインテールの少女は頬からズレた両手で頭を抑え、装いの涙目で目の前の少女を見つめる。
「どうして叩くのよ」
「もう一回叩かれたい?」
「遠慮します」
愛の悪気満々な言葉に、何処か異様な雰囲気を醸し出す凪咲の満面の笑顔が応対する。率直に身の危険を察知した愛は、凪咲の行動を制した。
「ったくもう、愛と藤崎くんがくっついて歩いてる傍を歩く私の気持ちも考えてよね」
そっぽを向いて、風に靡く髪を手櫛で解く。雲間から眩しいほどの橙色が射した。
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