4人が本棚に入れています
本棚に追加
街の光にぼやけた夜空に微かな星々が煌めく。夕暮れに満ちた雲は流れていた。
凪咲は家に着き「ただいま」の挨拶と共に「おかえり」の返事を受け取る。
いつものように風呂場に向かってシャワーの蛇口をひねり、スタスタと制服を脱ぎ捨てた。
長くしなやかな黒髪が艶やかな肌にかかる。出しっぱなしのシャワーから溢れる水は、緩やかに熱を帯びた温水に変わる。
(冷ったーい)
「気持ちいーい」
掌にシャワーを浴びせ、副音声を胸に秘めて快感を言葉にした。
熱を持ったとはいえ殆ど水に近いそれは、夏盛りの季節には心地良い刺激を与える。
腕や足などの末端から胴体に向かって洗っていく。
その後でシャワーから溢れる水を体全面に被り、髪の毛に潤いを齎した。
スッと髪の毛が縦に落ち、髪に当たった水を吸い込むようにして滴り落としていく。
瞼を閉じて顔面にシャワーを浴びる。弾いた滴が綺麗な孤を描いて床に落ちた。
濡れた髪が纏まる。砂埃に吹き晒された髪は求めるようにして水分を奪った。
「空、今どこに……?」
風呂窓の隙間から覗く星空は静か。サラッと揺れる木の葉。閉じ瞼のような太い三日月が御上市を照らしていた。
最初のコメントを投稿しよう!