「金縛り」初級編

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私は中学生。 そのありきたりな肩書き以外で、始まりがいつだったかなんて正確には覚えちゃいない。       彼らの訪問は何の前触れもなくやってきた。     好きな事をして十二時過ぎ、いつも通りの就寝。私の部屋は二階で、ベッドは大きめ。チキンハートな私は部屋の戸が開いているその隙間に軽い恐怖を感じるので、昔からきっちりと閉めて寝ていた。   そんな戸が、音もなく開く気配。   この頃は自分自身で奇妙に思うくらい周囲の気配に敏感で、忍者や侍みたいに人の気配だけで目が覚めた。 窓も戸も閉めきった、密室状態の自室。その密室を破られて目覚めないはずもなく、急浮上する意識。     お母さんかな…?     当たり前にそう思った。 ぴくり、動かそうとした体が動かない。     え?     筋肉に意識が伝わらない、骨に神経が通ってないような感覚。頭も腕も手も足も、動かない。     あ、金縛り…!     直ぐに理解出来たのは、小学生時代に一度だけ経験があったから。動かそうと思っても弛緩して動かない体。だけど不思議と眼球だけは自由で、暗がりの中胸が呼吸に合わせて浅く動いているのが見える。     なんかオカシイ。なんかマズイ。なんかチガウなんか居る!!     足先の左奥、戸へ無理に眼球を動かし目を凝らす。恐怖と緊張。気配で感じた通り、たった十五センチ程に開いた戸。隙間には闇。     え、やだ、どうしよ…!     僅かに白く発光した女が、うなだれて立っていた。
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