砂飼い。

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  ある砂漠に砂を生き物のように 飼い慣れせる種族がいました。   少年もその種族の1人でした。   生命がないはずの砂は盛り上がったりくねったりして少年に大変懐き、いつも離れようとしません。       少年は砂の事が大好きでした。   周りから見れば 異常といえるくらいに。   『僕には君だけいてくれれば良い、たとえ話すことが出来なくてもそれで良いんだよ。』       少年の中ではすでに砂は 『大好き』から『大切』な 存在となっていました。           そんなある日、 砂漠に雷雨が起こりました。   大雨は何日も続き、 とうとう村にも雨が 洪水の様に押し寄せてきました。       少年はとっさに 砂を家に入れようと 外に出てしまいました。   その時、洪水が少年のところに 押し寄せてきます。   そして少年は砂を抱えたまま、 気を失ってしまいました。       何日も何日も経った頃、 少年はやっと目を覚まします。   枕元には家族がいて、 色々な話を聞きます。 かなり眠っていた事、洪水で流れてきた水がほとんど引いた事。       少年はようやく思い出しました、洪水が迫ってきたあの時、 砂が壁を作り守ってくれた事を。   話を最後まで聞かないうちに 外に走りだして砂に向かって 名前を呼びました。   反応がありません。   何度も何度も叫んでみても、 声が枯れそうになっても 砂は反応してくれません。       見兼ねた村人が言いました、 『お前だけじゃなく村人全員使えなくなっちまったんだよ、何故かあの洪水以来お手上げだ』       少年は信じられません。   信じたくなくて砂を掴んでも 手のひらから流れていくだけの 砂を見て涙が流れました。       生命がないはずの砂に、 少年は『愛して』しまいました。   周りから見たら異常な『愛』は 少年にとって、ずっと一番 大切な感情であり続けました。  
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