魔女と結婚したヴァンパイア

魔女とヴァンパイア

イザベラの故郷はルーマニア北東部にあるバカウという村で、車は少なく主な交通手段は今だに馬車だと言う（1999年当時の話）。そんな中でお父さんがバスの運転手をしているのが一番の自慢らしい。肉屋などなく、各家庭で飼っている鳥や豚を食べる時にしめるのだそうだ。豚肉はソーセージにする他、塩をふって窓際につるしておけば勝手に生ハムになってくれるらしい。それを燻したのがベーコン、だそうだ。生肉は絶対に食べないとのこと。私が、日本では牛刺しや馬刺しと言って牛や馬の生肉を食べる習慣があり、特に馬刺しは私の大好物だと言うと、緑色の大きな目をさらに大きく見開いて驚いている、特に馬を食べるということに極めてびっくりしたようだ。
「ルーマニアで生肉を食べると悪魔かヴァンパイアだと言われるわよ」イザベラいわく、ルーマニアでは今でもドラキュラの存在が半ば信じられているとのこと。「私の家から４時間くらいの所にドラキュラ城があるの、あんたまさかヴァンパイアじゃないわよね？！」と半分本気で疑っている様子。私は何とか話題を変えようと「で、そのドラキュラ城が二つあるってのはどういうこと」と聞いてみた。「うん、ドラキュラとドラキュラ伝説は違うんだ、伝説はトランシルバニアの領主ブラドっていう実在の人間を元にした作り話だよ、ブラドはトランシルバニアを守るために敵と戦ったんだけどやり方があまりにも酷かったんでドラキュラが乗り移ったと言われたんだよ」「ずいぶん詳しいんだね」「うん、手を貸したのはジプシーだからね」「で？」「うん、それでブラドの住んでた城にドラキュラ城っていうあだ名がついたんだよ、でもブラドはトランシルバニアの人達からすれば敵から守ってくれたヒーローなんだ」「そしてそれが伝説になったと・・・」「うん、逃げ帰った奴らが自分の国ででっちあげた作り話だよ、何でドラキュラ物語の本や映画がイギリスで作られてれるのか不思議に思わなかった？今だにルーマニアのことが悪く言われてるよ」。「へえ～・・・」「だから城の本当の名前はペレシュ城っていうんだ、今は子孫たちが管理してる、中の見学もできるよ」「そりゃすごいや、入ったことあるの」「ないよ、すごく高い入場料を取られるからね」