小さな命

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「……ごめん。ちょっと取り乱した」 あたしはミルクティーに口をつけた。 「……俺、あの夜、遊びでなつみと寝たんじゃないよ。前から、なつみのこと見てて、合コンも連れに無理言ってセッティングしてもらったんだ。 信じてもらえないかもしれないけど」 和史は、少し悲しそうに破られた同意書を集めた。 「……お前が、絶対産みたくないっていうなら、無理は言わない。手術費用は、俺が負担する」 和史は、残りのコーヒーを飲み干すと、席をたった。 「……パチ屋に戻るわ。連れ待たしてるし。また、連絡する」 落ち込んだような、悲しそうな表情で和史は、喫茶店を後にした。 伝票が和史と共にいなくなっている。 会計を済ませてくれたようだ。 あたしは、お腹に手をあてて、しばらく呆然としていた。
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