もう、戻れない

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時刻は、午前9時を回っていた。 そういえば、和史、サラリーマンやってたよね? 普通なら、仕事に行っている時間…… どうして、あたしなんかに会いに来たんだろう? あたしはとりあえず、上下黒色のスウェットに着替えた。 12時までには、身支度をして『CAROL』まで行かなくてはならない。 早く、和史の話を聞かなければ…… 今更、ななかの事って何だろう? あの子は、あたしが居なくなっただけで十分幸せでしょ? これ以上、あたしに何を求めるの? あたしは、居間にある白い革張りのソファーに腰かけた。 客からの貢ぎ物だ。 確か、どっかの専務って言ってたっけな? 興味とか、全く無かったし…… 客からの貢ぎ物は、生活の助けになるし。 ブランド品は質屋に売れば、家賃と光熱費くらいにはなる。 和史は、あたしの隣に腰かけると、よどみきった荒んだ瞳で、あたしを見た。 あたしは、和史の顔をきちんと見る事ができず、思わず反らしてしまった。 あまりにも、残酷な瞳だったから……
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