もう、戻れない

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「会社、どうしたの?」 和史の表情に、たまり兼ねたあたしは、ようやく重い口を開いた。 本当は、何も話したくなかったけど…… 「有休もらった……」 和史は、それだけ蚊の鳴くような鳴かないような声でしゃべった。 明らかに、いつもの和史じゃない。 おかしい。 絶対、何かあったんだ。 「ななかは?」 「静岡の実家……」 あたしは、びっくりして目を見開いた。 静岡の実家……?! 和史の実家にななかを連れて行ったの? 和史の両親には、ななかの事はおろか、あたしと和史との間柄の事も一切話していない。 突然、ななかを連れて来たなんて、和史の両親が知ったら、修羅場どころかひっくり返って倒れてしまうだろう。 それに、あたしは和史んちの家族構成すらしらなかった。
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