もう、戻れない

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和史は、しきり直すかのように深呼吸すると、再びしゃべり始めた。 「最近は、独り言だけでなくて、頭を掻きむしったり、腕や足を掻きむしったり……自傷行為を繰り返すようになってって……」 「どうして、宮森先生に相談に行かないの?」 「ななかが嫌がるんだ」 「で、ご両親は何?」 「最初は、すごい怒られた。でも、なつみが一人で頑張って育ててきたこととか話したら、今度なつみを連れて来なさいって……」 何考えてんだ……この男は。 あたしは、水商売してる人間なのに、ホイホイと両親に挨拶に行くなんて、出来るわけがない。 それにあたしには、今は磯本さんの事しか頭にないもの。 ななかがどうなろうと、あたしは何とも思わない。
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