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あたしは、その日の夕方に病院を後にした。
妊娠したと分かっていてもタバコに手を出した。
ピアニッシモのメンソール。
あたしは、昔からこのタバコしか吸わない。
どうせ、イラナイ子の命。あたしは、生命の尊さなんて考えたこともなかった。
同意書を片手に、和史に電話をかけた。
ダイヤルが3回回り、和史が出た。
「なつみ?」
電話ごしに和史のハスキーボイスが聞こえる。
「…うん。ちょっと今から出れない?」
あたしは、タバコの灰を地面に落としながら言った。
VUITTONのトートに同意書をねじいれた。
「…いいよ、場所は?」
意外にも、和史はすんなりOKしてくれた。
あたしは断られると思っていたから、少し驚いた。
「……駅ビルの横の喫茶店で、6時に待ってる」
それだけ言うと、あたしは電話を切った。
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