ある夜

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死を絶えず意識しながら息を吸っている人が、 どれだけいるでしょうか。 いない、と思います。 1秒後に大地震が起きて生き埋めになる。 30分後に細菌テロで死ぬ。 夜寝たら起きないかもしれない。 そんなことを想像し続ければ、先に精神が崩壊してしまう。 だって、それはつらい想像です。 そこにあるべきものが、 ふとした瞬間に、 永遠に触れることすら、叶わなくなる。 日常にあろうとなかろうと、 乖離された二つの存在を繋ぐのは思い出でしかなく、 永劫に隔絶された壁を越える手段はそれにしかない。 他人であろうと、自分自身であろうと。 死は絶対の名を冠して、そこに在る。
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