ある夜

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何かあった? って偶にきかれます。 何もなかった。 否、何もなかったんじゃない。 何もないということがあったです。 叫び、慟哭に紛れて尚、何も得られない。 この渇きが満たされるなら、なんだってしよう。 けれどその方法すら、全く解らないのです。 或いは、逆説的な意味で、僕が誰かと繋がっているときに、寂しいとか悲しいとか感じたら、それは信頼の証明であり、それだけ気を許しているという証明なのです。 それは、僕はひとりであると実感できるから。 なぜなら僕はひとりだからです。 悲しみを、受け入れようと思います。 これは誰もが通る道であり、 これは誰もが感じる感覚であり、 これは誰もが知る痛みのはずなのです。 僕だけが特別なわけではない。 けれど、もう少し時間が欲しい。 この悲しみは、やたらと粘着質だ。 本当にこの悲しみは、それだけに起因するのか確かめる必要があるみたいです。 また、ひとりになろう。 けれどもう、ひとりじゃない。
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