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「ほんとかよ」
「ほんとだよー」
二人は笑い合った。
まるでずっと一緒に過ごしてきて、十年もの間、会っていなかったのが嘘のように二人は自然だった。
「久しぶりに演ってみようか?俺がピアノを弾くから、ナノカは歌って?」
「うん。分かった」
一夜は立ち上がると、ピアノの側に行き、椅子に腰をかけた。
ナノカがその横に立つ。
「入ってもいい?」
ノック音がして、ドア越しに奈乃花の母親の声が聞こえた。
「いいよー」
ドアが開き、奈乃花の母親が紅茶とケーキを持って入ってきた。
どうやら奈乃花母お手製のケーキのようだ。
「ちょうど今朝焼いておいたの。お口に合うといいんだけど」
「うわぁ、うまそう。おばさんのケーキ、めちゃくちゃ美味しかったの覚えてます。本当にありがとうございます」
「まぁ、ありがと、イチくん」
母親は上機嫌で、小さな猫脚テーブルに紅茶とケーキを並べる。
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