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「おはよう!」
翌朝、階下に下りた一夜を、奈乃花はとびきりの笑顔と挨拶で迎えた。
「…はよ」
「どうしたの?声、元気ないよ?」
「そ、そんなことないよ」
「そ?」
一夜は昨夜のことは言わなかった。
あの後、歌い終わった奈乃花が無事に家に辿り着いたのを見届けてから、一夜も眠りに就いた。
とはいっても、頭から奈乃花の歌声と涙が離れず、ろくに眠ることはできなかった。
「今日はどうするの?予定は?」
「いや、まだ何も考えてないよ」
「じゃあ、朝ご飯食べたら、あの河原まで散歩に付き合ってくれる?」
「ああ、いいよ」
「やった!」
無邪気に喜ぶ奈乃花。
一夜は何も変わりない奈乃花の様子に戸惑いながらも、台所の椅子に座ると、用意された朝食を食べだした。
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