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瞳は潤み、今にも涙が溢れだしそうな微笑みだ。
「だから…」
「あの約束、覚えてる?」
「えっ?」
ふいに、一夜が奈乃花に尋ねた。
この町に戻ってきた本当の理由。
「小さい頃、この土手でした約束」
「『大きくなったら夢を叶えて一緒にいろんなものを見ようね』ってやつ?」
「そう!それだよ」
一夜は嬉しかった。
ナノカも忘れずに覚えててくれたんだ。
「俺がこの町に戻ってきたのは、本当はその約束を思い出したからなんだ」
「えっ」
一夜は続けた。
「昨日『星に願いを』演ったろ?」
「うん?」
奈乃花は不思議そうに一夜を見つめている。
「あの曲が使われていた映画、覚えてるか?『ピノキオ』。おじいさんに愛情を込めて作られた人形が、人間になりたいって夢見て、本当にその実現不可能な夢を叶える物語」
「………」
「あの映画を見て、どんな夢でも諦めなければ叶えることが出来るんだって、俺、子供心に思ったよ」
一夜は目を細めて、遠き日の幼い奈乃花と自分を思い出した。
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