6)灯り始めた光

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 その夜、奈乃花は一人考えていた。  頭に思い浮かぶのは一夜の言葉だった。  『俺がおまえの光になってやる』  奈乃花の心は揺れていた。  歌手になるという夢。  一度は諦め、心の奥底にしまいこんだものだった。  それは。  一人では勇気が持てなかったからだった。  夢を見て、もう二度と大切な何かを失いたくはなかった。  イチの言葉。  信じて、もう一度夢をみたい。  自分自身で光を探したい。  でも。  怖い。  すごく怖い。  だけど。  ………。  動けないから辛いんじゃない。  動かないから辛いんだ。  言えないから苦しいんじゃない。  言わないから苦しいんだ。  見えないから進めないんじゃない。  見ようとしないから進めないんだ。  ………。  奈乃花は葛藤していた。  迷いや不安。  闇に閉ざされた奈乃花の目には光はなかった。  しかし、今、光が消えた奈乃花の世界に、一筋の光明が見えようとしていた。  確かに、心に光が灯り始めていたのだった。
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