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「ほんとだよ…」
奈乃花は顔を上げ、神妙な面持ちで一夜を見た。
その瞳に一夜の姿が映っていても、奈乃花の目の前に広がるのは、ただの暗闇だったが。
「…でも何で?…とりあえず、ここの土手に座ってから話そう」
「うん。でもその前に…」
奈乃花は、その場にしゃがみこむと、手探りで何かを探し始めた。
一夜は奈乃花のいる場所から二メートル程離れた場所に落ちている杖を見つけた。
一夜はそれを取りに行き、奈乃花の元へと戻った。
「探してるのって、この杖?」
そう言うと、一夜は奈乃花の右手をそっと掴み、杖を握らせた。
「そう、これだよ。ありがとう」
「いいよ、お礼なんて。立てる?」
「うん。大丈夫。相変わらず優しいんだね」
「そんなことないよ」
一夜は立ちあがった奈乃花を支えながら、ゆっくりと土手に腰を下ろした。
二人は肩を並べ座ると、話の続きを始めた。
「それで、どうして目が見えなくなったんだ?あっ、でも、もしナノカが理由を言いたくなかったら無理に言わなくてもいいから」
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