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「ありがと。でも、イチにはちゃんと話しておきたいから聞いてね」
「分かった」
「うん。あのね、イチが引っ越してからしばらくして、大雨が降った日があったのね。その時に、私、一人で遠くまで遊びに行っちゃって迷子になったの。みんなが必死に探してくれて、お父さんが道で倒れてる私を見つけてくれたんだ。でも、その雨に濡れたのが原因で高熱が続いて、ある朝、目が覚めたら何も見えなくなってたの」
奈乃花は悲しげに笑った。
「そうだったんだ。…なんか見えてるみたいなのにな」
一夜の言うとおり、奈乃花の瞳はとても美しく澄んでいて、まるで全てを見通しているようだった。
「ほんとに見えてたらいいんだけどね。…あっ、そうだ!私ん家に寄って行って?お母さんたちもきっと喜ぶよ。それとも、もう何か予定入っちゃってる?」
「いや、特にこれといっては」
「じゃあ決まり!ね?」
「分かったよ。ったく、ナノカは相変わらず元気いっぱいって感じだな」
「まぁね」
奈乃花は笑いながら、無邪気にピースをして見せた。
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