2)夢

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 奈乃花は、まるで見えているかのように、階段を一歩ずつ上がっていく。  そして、廊下の角を曲がると、自分の部屋へと一夜を導いた。  「座って」  「ああ、ありがと」  奈乃花の部屋は綺麗に整えられていて、何一つ変わらず昔のままだった。  壁に掛けられた奈乃花の手描きの絵も、木製の勉強机も、ピンクの花柄のカーテンも。  まるで、あの頃に戻ったかのような気持ちになる。  「この部屋、懐かしいなぁ」  「十年ぶりだもんね。でも何も変わってないでしょ」  「だからいいんだよ。あっ、そのグランドピアノも懐かしいなぁ。よく俺が曲を弾いて、ナノカがそれに合わせて歌ってたよな」  一夜は奈乃花の後ろにある大きく綺麗なピアノを見て言った。  そのピアノは、埃ひとつ被っておらず、丁寧に磨かれてある。  「そうそう。私、全然ピアノ弾けなかったのに、イチと同じピアノが欲しいってわがまま言って買ってもらって。結局弾くのは、いつもイチだったよね。イチの演奏ってほんとに上手だったもん。でも、あれから少しは私も上達したんだよ」  
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