Canon〝素晴らしき音楽〟

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Canon〝素晴らしき音楽〟

―美しいメロディーが聞こえる― いつもの庭に君はいた 午後の暖かい風が吹く頃 君は決まってここで寝ている 「存在することが許されない」と 昔君は笑いながら言った 自分の運命を見定めたかのように笑っていた そんな悲しい顔をしないでおくれ なんだか胸がいたいよ 今まで当たり前のように生きて来た僕は 友達と笑いあうことも当たり前だと思っていた 地上の世界から嫌われた君は 仄暗い海の底に逃げ込んで 誰とも会うこともなく 誰とも話すこともなく ただ自分が生きていくことが許されるまで ずっと膝を抱えて待っていたんだね ―あぁ、あの美しいメロディーは波の音にも聞こえる― そうして今君はここにいる 太陽の光は暖かいだろう? 鳥達のさえずりや木々の揺れる音は ここだけの特別なメロディーだ 僕には君が目を覚ました時の瞼の音だって聞こえる 君の瞳が僕を捕らえた瞬間はまるで花が咲くようだ さぁ、一緒に話をしよう 君の笑顔が何より好きなんだ ああ、そうか このメロディーは君から聞こえてたんだね どこかで聞いたことがあると思ったら 君からこのメロディーをずっと聞いていたんだ 何年も何十年も いや、きっと何千年も前から… 僕と君が出逢った時からずっと… ―美しいメロディー。それは君自身―
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