第一章

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始まりは6限が終わった後だった。神様は執行猶予なしの実刑判決を下したようだ。 大きな伸びをしてから帰りの用意をし始めようとすると、教壇に立ったカマちゃんが教室から出ていこうとする人を止めていた。さて、何がおっぱじまるんだ。 カマちゃんはみんながいることを確認すると、教室のドアと窓を閉めきった。この気温で閉めきられると正直暑い。先の勝負で獲得した賞金で避暑道具を買ったらどうかとは思うが、クラス全体の意向が一致せず、結局保留ということになった。俺としては早く使わなければ宝の持ち腐れだと思うのだが、これは俺が即物的すぎるのだろうか。そんなわけで室内の気温はうなぎ登り。カマちゃん、できるだけ手短にお願いしたい。 カマちゃんは教卓に両手を着いて、お決まりの委員長スタイル(命名俺)で話し始めた。 「結論から言いますね。2学期も始まってみんな生活リズムを取り戻してきた頃だと思うんだけど、これは相手にとっても同じ。これが何を意味するかみんな分かるよね?」 そんなことだろうと思った。この勝負が始まってから気づいたことではあるが、カマちゃんは結構アグレッシブなのだ。攻撃こそ最大の防御。そんな言葉がぴったりだ。 「まあ、改めて言うと勝負を仕掛けられました。」 これは意表をつかれた。 変わらず静かなクラスにも唖然とした空気が流れているのが手に取るように分かる。 仕掛けたのではない。仕掛けられたのだ。 よもや誰も予想し得なかった事態だろう。できた奴がいたとしたら予言者になるかカジノで働いたほうがいい。 ようやく我に戻ったクラスがにわかにざわつき始めた。それをカマちゃんが制してから続けた。 「ちょっと静かにして。…肝心の相手なんだけど、9組なんです。」 またクラスはざわつく。うるささ3割増といった感じだ。原因は判明している。そう。 9組といえば開幕戦(と1年の中では呼ばれている)で1組に勝った組なのだ。ゆえに俺ら3組と、同盟を組んでいた4組と並んで動向が注目されていた組だ。むしろ今まで動かなかった1組のほうが注目度は高かっただろう。 そんな中で起きたこの出来事。いったい誰が騒がずにいられるだろうか。
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