第一章

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「マッチは大会で優勝もしてるんですよ。」 とは夕乃さんの弁。勝負の種目はまだ決まっていないが、要注意人物には変わりないだろう。 それにしてもわざわざ話題に出してくるということはそれほど楽しみなのか。柳瀬さんと夕乃さんは笑いがら町田さんとの勝負について話している。もしや、夕乃さんのように仲間に入れる気では。まあ、そうなったとしてもできる限りの協力はしてあげるつもりだが。ここでひとつ訊いておく。 「町田さんが強いのは分かったけど、弱点とか攻略法とかも知ってるんだよね?」 「いや。」 柳瀬さん即答。おい。 「う~ん。マッチの弱点ねぇ…。」 そう言って考え込んでしまった。夕乃さんのほうを見ると慌てたように目を見開いてから 「分かんないです…。」 と小さな声でおっしゃった。柳瀬さんに視線を戻すと頭に当てていた手をポンとたたいて 「うん!分かんない!」 自信満々で言った。俺がやれやれといった感じで笑うと、弁解してきた。 「だって本当にないんだよ。ねぇ、夕乃。」 夕乃さんも頷く。ここまで言ってもないってことは本当に分からないのだろう。嫌いな食い物のひとつでもあっていいとは思うのだが。町田さんもミステリアスにしたほうがいいかもしれない。 するとチャイムが鳴り、担任の矢部が教室入ってきてSHRが始まった。 午前中の授業は適当に流し、うまくやり過ごせたらしく教師に咎められることもなく無事に昼休みを迎えた。 昼飯を平らげた後やることもないのでテルの前の席に座り、テル持参の漫画を読んでいた。貸してもらう時、 「これはあんまり。」 と教えてくれたが、そこそこ面白い。ジャンルはバトルラブコメなのだが、ヒロインのツンデレっていうのか?まあ、それがたまらない。おっと。誤解してもうと困るので、俺はオタクじゃないことを公言しておく。どこからともなく冷ややかな感情が俺に向いてる気がするが、この暑さで現れた幻だろう。
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