第一章

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1巻を読み終わり、テルに2巻を貸してくれるように頼むとそれを渡しながら 「今日、ちょっと遠くに買い物にいくんだ。ついて来ないか?」 俺はテルの思わぬ誘いに本を受け取る手を止めて驚いた。ぶっきらぼうな話し方だが、それがテルだということくらい理解している。それに断る理由もこれといってない。 「ああ。いいけど、どこまで行くんだ?」 「富士ヶ谷。」 富士ヶ谷といえば学校の最寄りの駅から電車で30分ほどかかる都市のことだ。遊ぶのにたまに行く。そういえば最近はご無沙汰だな。 「結構遠くまで行くのな。」 「この辺りだとそこしかなかった。」 テルのことだから買い物とやらは何だかだいたいの予想はつく。それにしてもテルのご所望の品はそんなに希少価値の高い物なのか。過去形ってことは調査済みってことだろう。 「そうか。じゃあ、放課後な。」 「うん。」 そうして2巻を受け取った。 午後の授業は携帯ゲームでやり過ごした。3面のボスが強くて倒せなかった。こいつをラスボスにしたほうがいいんじゃないかと思うほどだ。 放課後。広太とサルにはテルと用事があるから先に帰ってくれという旨を伝えてからテルと駅に向かった。サルがついて行くと言ったが、これからやるであろうことを言うと 「ああ、いいや。」 とあっさり引いた。まあ、奴らには興味皆無の分野だからな。 かくして駅に着いた俺とテルは切符を買い、富士ヶ谷行きの電車に乗った。 この前乗ったのは逆方向の電車だったので、こっち方向は久しぶりだ。乗っている間はテルと二言三言会話をしたが、それ以外はうつらうつらしていた。なんで電車の揺れってものはこんなに心地いいのだろうか。そんな疑問を抱いていると俺の瞼は光を拒んだ。
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