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初日は午前中で終わりなので、学校に来てからそんなにしないうちに放課となった。矢部に渡された膨大なプリントは机の中に押し込んだ。
「よう、帰るか。」
顔を上げると広太とおまけにサルがいた。
「陽平、今日寝坊したんだって?」
なんでこいつが知っているんだ。広太を睨む。広太は悪いと言って頭を掻いていた。まったく余計なことを。
「そうだよ。悪いか?」
「じゃあ、本当のこと矢部に言えよ。」
「黙れ。」
サルはニヤァと笑う。気持ち悪い。
「おお?恥ずかしいんか?ん?」
「…。」
こいつマジうざい。
「おいおい、だんまりかよぉ?」
サルの笑みは残忍なものに変わる。
「っ…。」
絶対ぶっ殺してやる。
「なんなら俺が矢部に言ってきてやろうか?"那須君は恥ずかしくて本当のことが言えませんでした"って。どうなんだよぉ、陽平さん?」
サルは残忍な笑みを一層深めた。広太が"その辺にしとけ"とサルに止めるように促す。しかしサルの耳にはそんなことは届いていないらしく、楽しそうにこちらを見つめて、いや、見下している。
「くっ…。」
もう許さねー。あとで思いっきり泣かしてやる。
思いきり拳を握った時、教室の後ろのドアで声がした。
「成岡と工藤はいるか?」
この低くて太い声、この高校の生徒ならあの猛者を知らない者はいないだろう。振り向くとそこには生活指導担当、体育教師の岩村豪司がいた。
背は俺より高い広太よりも遥かに高い。ドアの所に立つとその横幅で通れないほどだ。
背後でドサッという音がする。見るとサルが鞄を落としていた。それだけじゃない。冷や汗を垂らしながら震えていた。そう。今のサルにとって岩村は天敵なのだ。それは一学期に遡る。
テストで見事赤点をとってしまったサルは夏休み中、補習を受けなければならなかったのだが、サルはというと全部すっぽかしたのだ。サボると休み明けに岩村の説教があるのは既知のことだったが、サルはすっかり忘れていたらしい。ツケが回ってきたというやつだ。
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