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またやってしまった。
正彦は、元気でやっているだろうか。
友達もいない正彦は、ひとりの時間を何を考えて過ごすのだろうか。
人並みに泣いたりするのだろうか。連絡したい気持ちを必死に抑えているのだろうか。
変な女にひっかかったことに気づいた頃だろうか。
こんなふうに、わたしがわたしに捨てられた男のことを考え、時には涙を流すのは、情けや憐れみの気持ちからではないようだ。
正彦を捨てたわたしは、寂しい。
くだらないことをメールすることができない。
気まぐれに食事に行くことができない。
洋服を選んでもらえない。
女との買い物で、「その女に似合うか」という観点で服を選ぶことができる男は、案外少ない。
大抵の男は、着る人間のことなど頭になく、好きなタイプの女優がその服を着て微笑んでいる姿でも妄想して、より萌える方の服をゆび指すのだ。
正彦はそういうところにおいてはいい男だ。
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