敗走

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雨が降っている 僕はその中を走っていた 雨が森の木々に降り注ぐ中…僕の体にも静かに雨粒は降り注いだ 向かう先は深い森の高台 そこからなら…城下を見渡せる 父が連れて行ってくれたあの場所なら… 「そんな…」 高台から広がる風景は最悪だった 街の全てが焼け崩れ、 今にも息を引き取る沢山の戦士や騎士のうめき声 敵軍に連れて行かれる民たち …僕を守った重鎮たちの捕虜となる姿 「…そんな」 僕は泣いてしまった 泥っぽい土が鎧についた 高貴な鎧が泥で汚れていく 『…』 『……』 誰かいる!? 僕は剣を手に振り向いた そこには小汚い少年が立っている 「…誰!?」 「君は誰だ!!」 銀髪に赤い瞳の少年… なぜだろう?…小汚い格好をしているのに高貴な雰囲気を漂わせている 少年は無言 彼にもまた、雨は降り注いでいた
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