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穏やかな秋風が土手のススキを撫でている。
「どうやら この尾張も噂のうつけ者のモンになりそうだな」
そう小六は、ぼやくように言いながら、何処からか盗んで来た柿を藤吉郎へ放り投げた。
「関係ねぇさ」
穏やかな風に揺れるススキを寝そべって眺めていた藤吉郎は、少しだけ体を起こし、その柿を両手で大事に受け取ると、一口頬張りながら続けた。
「食うや食わずの儂ら盗人風情には、そんなことより、この柿一個のほうが大事だろ」
そう言うと、藤吉郎は、また寝そべって今度は、空に目を向けた。
「違いねぇ」
隣に腰掛けていた小六もそう言うと、藤吉郎のように、寝そべって空へと目を向けた。
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