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藤吉郎は、空に目を向けたまま、よく熟れた柿を啜るように喰らっていたが、滴る汁のべた付き加減に気付き、ふとその柿を握る右手に目を落とした。
そして確かめるように、隣で同じように柿を啜っている小六の右手を見た。
その視線に気付いたのだろう、小六は、空に目を向けたまま
「何だよ、やんねぇぞ」
と、素っ気なく言うと
「違げぇよ」
そう言うと藤吉郎は、また自分の右手に視線をもどし、まじまじと眺めながら
「何の為に儂の指は六つもあるんじゃろうか」
そう言うと少し悲しげな表情(かお)を浮かべた。
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