愛し、愛され、東奔西走

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「寝てるのは、朱美ちゃんって言って、僕の妹だよ?」 「ダウト!」  ――嘘じゃ、ないんだけどなぁ。書類上では。  まぁ、朱美に興味を持った瑠美から少し離れた場所で、僕と雪は話し合っていた。 「瑠美ちゃんって言ったかしら……健ちゃん。彼女との関係は?」 「は、話すから物干し竿は置いてよ……」  渋々了解した雪は、物干し竿を置くとスリッパ片手に僕の横に座った。  ――あれ? スリッパの底の部分が光った気が……うん、気のせいだよね。 「ふぅ……瑠美ちゃんはね、僕の両親の親戚の子なんだ。だから、本当に小さい頃から一緒に遊んでたし、どこに行くにも一緒だったんだよ。……でも、僕がある事情で一人暮らしをすることになったときにね――」  ……朝、起きたら誰も居なかった。無駄に広い家の中で、僕以外は誰も居なかった……まるで、氷のなかの小さなお城。  いつも、一緒だったはずの彼女は……居ない。 「――その次の日に、雪ちゃんと朱美ちゃんと出会ったんだよ。……だから、余り寂しくはなかったけどね」  いつも以上に真剣な雪の顔が目の前にあった。それは――美しいと、思ってしまうほど……だった。
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