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「ふぅ~ん……瑠美ちゃんは一度、健ちゃんを置いて消えたのね」
明らかな、皮肉を込めた声が部屋全体に響いた。朱美に気を取られていた瑠美の手から、僕の人形が落ちた。
――イテッ。
「まぁ、次の日に私たちが来たから健ちゃんもあまり悲しまなかったけど、下手したら心に大きい傷を作ったことになるのよね」
雪は何が言いたいのだろうか。瑠美に向かって言い放つように、刺々しい言葉を喋る。
その言葉を聞いた瑠美は気を落してしまい、暗い雰囲気が漂っていた。
「雪ちゃん、そんなこといわないでよ……僕、そんなこと全然思ってないしさ?」
「健ちゃんは、黙りなさい。私は瑠美ちゃんとお話がしたいの……良いわね?」
雪の目の前にいた瑠美は複雑そうな表情ではあったが、雪の真剣な目つきを見て頷いた。
「……分かりました。健一様、私と雪さんだけでお話がしたいのですが……」
「う、うん……」
僕は不安ながらも、朱美を背負って台所から出ていった。
ひとまずは……部屋に行こうかな。
「さて、雪さん。健一様を抜いた一対一で話し合いましょう。……何から、聞きたいですか?」
目の前に居る、雪と言う女性の目には怒りに似たものが写っている。
私は、その雰囲気に耐えきれずに目をそらした。
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