242人が本棚に入れています
本棚に追加
膨れた顔をした朱美が紙とペンを持って、何やら書いていた。
「で……少しは落ち着いたかな? 綺麗なんだから、泣きすぎると崩れちゃうよ」
笑顔の雪を見ていると、自分なんかが彼女の友達で良いのか? と、考えてしまう。
しかし、それでも友達になりたいと言ってくれた雪。
素直に……嬉しかった。
「……できた……」
朱美が、紙を瑠美の前に出してきた。覗き込むと、契約書になっていた。
「……うん、朱美ちゃん。よくやった! さ、瑠美ちゃん」
雪は私に向かってボールペンと朱肉を渡して、私の目を見つめている。
下の紙を見ると――契約書の内容が細かに書いてあった。
《まず、この契約書は坂崎健一を守るため、嘉納雪。坂崎朱美、紅月瑠美の三人の同意を前提としたものである》
健一君を守るための……契約書ってことなのかしら?
というか……はっきり言うと、この契約書の完成度が素晴らしい。
戸籍なんか、完璧に偽装できるくらいだ。
「……この契約書は、何の為にあるのですか?」
「あぁ……健ちゃんを守るためと――健ちゃんが、私たちの誰を好きでいても心から祝福する同意書……かな?」
なるほど、そういう契約なのか。
最初のコメントを投稿しよう!