愛し、愛され、東奔西走

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 膨れた顔をした朱美が紙とペンを持って、何やら書いていた。 「で……少しは落ち着いたかな? 綺麗なんだから、泣きすぎると崩れちゃうよ」  笑顔の雪を見ていると、自分なんかが彼女の友達で良いのか? と、考えてしまう。  しかし、それでも友達になりたいと言ってくれた雪。  素直に……嬉しかった。 「……できた……」  朱美が、紙を瑠美の前に出してきた。覗き込むと、契約書になっていた。 「……うん、朱美ちゃん。よくやった! さ、瑠美ちゃん」  雪は私に向かってボールペンと朱肉を渡して、私の目を見つめている。  下の紙を見ると――契約書の内容が細かに書いてあった。 《まず、この契約書は坂崎健一を守るため、嘉納雪。坂崎朱美、紅月瑠美の三人の同意を前提としたものである》  健一君を守るための……契約書ってことなのかしら?  というか……はっきり言うと、この契約書の完成度が素晴らしい。  戸籍なんか、完璧に偽装できるくらいだ。 「……この契約書は、何の為にあるのですか?」 「あぁ……健ちゃんを守るためと――健ちゃんが、私たちの誰を好きでいても心から祝福する同意書……かな?」  なるほど、そういう契約なのか。
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