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「雪ちゃんは、健一君とは同級生なんだよね?」
「うん、だから瑠美ちゃんは年上なんだよね。まぁ……」
雪は少し恥ずかしくなったのか、外方を向いていたのだが……私に何かを訴えかけるように、見つめてきた。
「……健一は、絶対渡さないよ? 健一は私の生きる意味、そのものだから……ね」
真剣に、雪は私を見つめた。
なかなかに、冷たく鋭い視線が私を貫くようだ。
……恐怖が沸き上がってくる。何故、雪は冷たい視線を私に?
しかし――
「……私は、諦めません。私だって、健一君が好きです。諦められるわけないじゃない……」
「…………」
――言ってしまった……!
だけど雪は黙ったまま、今までいた場所から少しだけ動いた。
それは、庭に置いてあった小さな……岩の下。
「……瑠美ちゃん、もう寝よっか?」
その下にあった――承諾書を手にした。
何の、承諾書かしら……?
「な、何の紙ですか?」
目の前の雪は「あ、これ?」と、言いながら笑って私に差し出した。
そこには――入学承諾書が、あった。
「これで、瑠美ちゃんも学生になろう!」
……少しだけ、驚いた。
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