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――朝…
鳥たちの鳴き声が微かに聞こえる。
カーテンの隙間から差し込む光がやけに眩しい。
その光を避けるように身体を捩った。
すると、顔のすぐ側で吐息を感じる。
“…あ、れ…?”
覚醒し始めた頭が目を開けろというので重たい目蓋を持ち上げてみる。
すると、目の前には『ごしゅじん』が居た。
「ひわあ…」
驚きのあまり、奇声が口を突いて出る。
『ごしゅじん』の腕に頭を乗せたまま。
アタシの奇声で起きてしまった『ごしゅじん』は、眠そうに大きな欠伸を一つすると“おはよう”とアタシの頭を撫でた。
何事も無かったかのように…。
アタシは顔を紅潮させたまま、のそのそと起き上がり、また一つ大きな欠伸をする『ごしゅじん』と一緒に、部屋を出た。
まだ少し寝惚けた頭でゆっくりと階段を降りていく。
『ごしゅじん』は何故か部屋を出る前から、肩を震わせていた。
今日は休日。
起きてから早々に『ごしゅじん』が着替えをしていたし、出掛けるのだろうか。
階段を降り、洗面所に入る。
すると、顔を洗い始めた。
『ごしゅじん』は顔に付いた泡を洗い流し、頬を伝う水をタオルで拭い終わると、突然声を上げて笑い出した。
「あはは、“ひわあ”って」
ツボに入ったようで、何度となく思い出しては笑っていた。
“そんなに笑わなくても…”と頬を膨らませ拗ねていると、“ごめん、ごめん”と大きな手がアタシの頭を包んだ。
…こんな事をされては適わない。
それから、リビングへ行き適当に朝食を済ませた。
歯を磨き、玄関へと向かう。
すると、『ごしゅじん』のお父さんと見知らぬ女性が立っていた。
“お邪魔しています”と女性が頭を下げるので、『ごしゅじん』も軽く会釈をする。
そんな二人のやり取りを、後ろから見ていた。
よそよそしい二人と出会したのもそうだが、一緒に出なければならない、というのは嫌なようだ。
『ごしゅじん』は二人が玄関が出ていくのを見送ってから、ゆっくりと靴を履き始めた。
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