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「トモキ!」
ふと自分の名前を呼ばれて振り返った。
嬉しそうな笑顔をし、手を振りながら駆け寄ってくる。
普通なら手を振り返すが、それが出来ない理由があった。
「えっと…誰?」
駆け寄ってきた人物を知らないどころか、どう見ても外国人。
日本から出た事のない僕に、外国人が僕の名前を呼びながら駆け寄ってきた。
「トモキ、僕だよ!忘れちゃった?」
「えっ?」
「もう8年前の事だから覚えてないか…」
突然の出来事や異様なまでに流暢な日本語を受け入れるのに必死だというのに、彼はまた僕に一つ問題を投げかけた。
8年前…僕が9歳の頃だ。
彼の正体を突き止める手掛かりは「8年前」と「流暢な日本語を話す同年代の外国人」という事だけだ。
暫く頭をフル稼働させて考えたが、やはり外国人に会った事はない。
「あ、顔を合わせるのは初めてだったね。」
それまでの僕の考えを一発で壊す発言。
顔を合わせた事がないのに、僕の事を知っているって?
「手紙…今も大切にしてるよ。」
彼はズボンのポケットから一通の古いエアメールを取り出した。
その宛名には拙い英語のスペルで「Parker Mayer」と書いてあった。
その時、僕の記憶の扉が一気に開いた。
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