もっと!シメる夫!! 【長男の章】

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――その点を、私が、 やんわり指摘すると、 夫は、こう切り返してきた。 「だって、奴らは、  ㊤のことを、チームの 『人数合わせ』くらい にしか、考えてない んだろう?ただただ 一方的に利用されてる だけなんだぜ? 最初からそんな風じゃチーム・ワークなんか期待出来ないだろ。」 「それは…まあ…。  私だって、そう思うけ ど…。」 実際、夫の言う通りだ。 いくら長男がやる気になって頑張っても、 力哉君達は、長男を、正式なメンバーとは認めていない。 案山子か何かの様に、『立ってるだけでいい』と思っている。 スタート地点が、そんな状況なのだ。 『案山子』の長男に、パスを回してくれるか どうかも、怪しい。 私が、何も言い返せずにムッツリ口を閉ざすと、 夫は、勝ち誇った様な顔をして、 『―な?』と言った。 ……う…、悔しい…。 なんか、こう……、 久しぶりに『負けた!』という気がする。 黙り込んだ私の代わりに 夫は、長男に向き直って尋ねた。 「ところで、練習は、 どの先生が指導してくれるんだ?」 長男は答えた。 「昼休みに、自分達で練習するんだって。」 「……は?」 我々は、 唖然として叫んだ。 「うそっ!先生が教えるんじゃないの?! だって、市内全部の小学校の『対抗試合』 なんでしょ?! しかも、初めてやる競技なのに……。 先生方は、誰も何も教えてくれないの?」 私の性急な問いに、長男は、只、ふるふると横に首を振った。 ―――はぁ? ちょっと待て!! 「ルールは?  それくらいは、教えてくれるんだよね?」 長男は、 また首を横に振った。 「ううん。  『特別、時間は取りませんから、出場する子は、自分達で練習しなさい』って言った。」 …私達夫婦は、同時に 「え~っ?!」 と、叫んでいた。 なんだ、そりゃあ。 やる気ねぇ~っっ!!
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