もっと!シメる夫!! 【長男の章】

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翌日。 長男は、 またしても、表情を固くして帰宅した。 それを見た私は、即座に 『断われなかったのか』…と直感した。 思わず、『ふぅ~っ』と 重い嘆息が漏れる。 さぁ、 何と言って励まそうか。 それとも、 『しっかりしろよ!』と言って、いっそ、喝を 入れるべきなのか? ……とりあえず。 今、思い付く限りの、 慰めや励ましの言葉を 用意して、私は、長男に向き合った。 「断われなかったの?」 「うん。――ていうか、 断わらなかったの。」 「?…なんで?」 「俺、やっぱり、  フットサル、やって  みようかと思って。」 私は、驚いて長男の顔をしげしげと眺めた。 長男のあどけない顔には最早、迷いの色は無い。 どうやら、 強引に押し切られて、 妥協したというわけではなさそうだ。 むしろ、 初めての『挑戦』に、 期待と不安で胸踊らせている様な、ワクワク感が伝わってくる。 ――――。 「アンタ、いいの?  『立ってるだけ』なん て言われてさ。本当に 仲間に入れてくれるか どうかも、わかんない んだよ?」 「それでもいい。」 長男はキッパリ言った。 「ただ走ってるだけでも 面白いもん。みんなと 走ってるだけでもいい から、やってみる。」 「…………。」 長男の言葉に、私は、 二の句が継げなかった。 『やってみよう!』と、自分から進んで参加する決意をしたらしい息子。 彼がそこまで言うなら、 それが本人の意思なら、 もう、何も言うまい―。 親として、 私が出来る事と云えば、ヤツの努力を、ただ静かに見守るだけだ。 今は、長男の意志を尊重しよう。
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