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強く『への字』に結んだ長男の口許を見て、
私は、またもやトラブルが起きた事を確信した。
これで一体、
何度目だろう――。
長男のあんな、ムスッとした顔を見るのは…?
「おかえり。
またなんかあった?」
私が声を掛けると、
長男は憮然とした態度で吐き棄てた。
「俺、キーパーやれって 言われた…。」
「えぇっ?誰に?」
「力哉君と浩介君と、
貴博君に………。」
「またぁ~っっ?!」
私は、場所柄も憚らず、大声で叫んでしまった。
数名の生徒が、チラッと私を振り向いた様だが…かまうもんか!
それどころじゃない。
「ちょっと、大丈夫?
キーパーの練習なんて してないよね?」
長男は、ムッツリと口を結んだまま、頷いた。
………なんてこった。
サッカーすら、
初めてだというのに…。
練習もしないまま、突然キーパーだなんて――!
いくらなんでも、それは
ちょっと厳しいだろう。
「なんで断らないの?」
「断わったよ!断わった けど――また…!!」
『また』か…。
『また』拝んだのか…!
っとに、
アイツら……まったく!
面倒な事があれば、
決まって、ウチの長男を拝みやがる!
拝んで良いのは、
神と仏だけ―と、世の中相場が決まってんだ。
ふざけるな!
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