もっと!シメる夫!! 【長男の章】

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――訊けば。 メンバーの誰もが、 キーパーをやりたがら なかったと云う。 …確かに。 フィールド上でボールを追うでもなく、後ろで、ジッと敵を待ち構え、 ゴールを守らなくてはならないキーパーは、我慢の要る大変な役割だ。 地味で、責任の重い 『ポジション』である。 下手すりゃ、 顔にボールが直撃する事だってある。 こうなればもう、 『ボールは友達』なんかじゃない。 ――ある意味、凶器だ。 その上、 相手の得点を防ぐ為に、 終始、緊張感を保ち続けなければいけない。 点を取られれば、忽ち、 キーパーの責任となる。 そう思うと、 走ってボールを追い掛けている方が、全然楽しいし、初心者には気楽だ。 何より、 サッカーらしくもある。 …だからといって、だ。 自分達が、やりたくないポジションを、他人に 押し付けるな!! まだ1年生なのに! お人好しの長男を巧みに利用し、楽して得して、勝とうだなんて――! その根性が、赦せない! 私はカッとなって、 先程、横を通り過ぎた、力哉君の姿を追った。 捕まえて、一発、ドカンと怒鳴ってやろうとしたのだが…。 下校の生徒の波に揉まれて、彼の姿は、既に、 見えなくなっていた―。
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