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子供達が眠ってから、
私は、恐る恐る居間へ
降りてみた。
夫は、相変わらずの無表情だ。
眉ひとつ動かさないで、
ジ~ッとテレビを睨み付けている。
テレビの中では、人気の
お笑い芸人が、派手なパフォーマンスでネタを披露していたが、夫は、全く笑わない。
「あのさ…。」
ややオドオドした口調で声を掛けると――。
夫は、
「試合、明日だよな?」
ボソッと呟いた。
「そうだけど…なに?」
「シメる―――っ!」
ふぇっ!?
「明日の大会、俺も行く事にした。アイツらの試合、何時から?」
「え…あ~…うぅ。」
私は大慌てで、
大会要綱のプリントを、拡げた。
手が汗を掻いており、
ヤケに滑る…いや、
手だけじゃない。
体のアチラコチラから、
変な汗が『ジワ~ッ』と噴き出していた。
「…えと…だいたい…
10時頃…かな?」
「10時頃ね。
うん、分かった。」
…なっ…何が、
分かったんだろう?
「…あの……仕事は?」
「休むっ!!」
うっ。
「シメるって…。
一体、何する気?」
「決まってんじゃん。
『ガツン!』と、
やっちまうんだよ。」
うひっ!
「何でもかんでも㊤に 押し付けて、好き勝手しやがって…。
あのクソガキ共が!マジ、ムカつくっ!」
―そ、そりゃそうだが。
「あの~。つまり、その
『ガツンと』っていうのは、え~…と。
具体的には何を―?」
「だから――!
ガツン!とやってやるんだよ、ガツンと!」
いや、その。
だから、え~と……。
つまりは、
ぶん殴るって事か?
…まさかね。
流石にソコまでは…。
「力哉君達のご両親に、何か言うの?」
「いや、本人達に直接、言う。」
ええぇっ!?
「言って解らなきゃ、
もちろん……だな。」
夫は、握り拳で殴る動作をして見せた。
その両頬が、ピクピク…と痙攣している。
次男の時は、
片側の頬だけが痙攣していたが、今回は、両の頬がピクピクしていた。
前回とは違う。
夫の怒りはMAXだ!!
ぶ厚いゼイ肉の下で、
マグマの様に煮えくり
返った、夫のハラワタが見える!
もう~、五臓六腑が、
ミディアム・レアだ!!
どうする?
私にはもう、
ヤツを止める術がない!
…どうする?!
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