眠れない夜

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『サヨナラ』を 言い慣れたら いつしか 『またね』が 言えなくなってた。 『ヒロキはいつも、そうやってはぐらかすもんね。』 2年前 付き合ってた彼女にそう言って振られた。 俺はその時 正直かなり『マセて』て 彼女も 友達も 自分の人生の、ある意味付録みたいに思ってた。 いい女と付き合ってることが、いい友達と付き合ってることが 自分の良さを決めるみたいな、そんな風に 自分の値段を 自分の価値を 周りで決めようとしていたんだ。 「ヒロキ?お前、なんか荒れてない?」 「はぁ?そんなことね~よ。」 嘘だ。 荒れてる。 彼女に図星さされて 挙げ句振られて でも 友達には相談できない 『順風満帆なヒロキ』が俺の作りあげた『俺』だったから。 「お、なぁあの子マジレベル高くねぇ?」 「お~、可愛いじゃん」 友達が騒ぎ出して やり始めたばっかのビリヤードのキューを止め 俺は顔を上げた。 「どの子?」 「ほら、あれ。」 友達が指差す向こう UFOキャッチャーのすぐ近くに 金に近い茶髪の 女の子 短いホットパンツに デニムのジャケット 中のTシャツは外国人の女の子がプリントされてて 派手でもない化粧 今時っぽいのに どこか他の女の子とは違ってた。 ナンパ待ちでもなく 家出でもなく 多分 デートでもない 時計を見る風でもなくただ、ガチャガチャ音のうるさい機械にすら興味を示さずに立っている。 あんまりにもジッと見ていたのか 女の子が視線に気づいて俺たちの方を見てきた 真っ直ぐな目は すぐに俺とぶち当たる。 「ジロジロ見てんな。変態野郎。」 睨みつけてきたその瞳が 綺麗だと思った。
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