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階段から降りてきた人影は、配島が今回の任務で追っている人物だった。
「…小島少将ですね。」
陸軍予備役少将、小島敬三。
かつては大陸戦線、満州を転戦し、戦の神様とまで歌われた人物として有名であった。しかし、陸軍内部の派閥抗争の煽りを受け失脚。
今では予備役に編入され、表舞台から姿を消しているとされていた。
「よくここを突き止めたものだ。少々見くびっていた様だな…」
配島を嘲笑うかの様な言。年齢は60歳を越えている筈だが、その見た目は10歳は若く見える。
それが、小島を神秘的な物とし、嘗ての戦歴と合わせて、若手将校らが彼を支持する所以であった。
「小島少将、私は陸軍の森赳閣下の命を承け動いています。必要とあらば…貴方を射殺しても構わないと…」
配島がここまで言いかけたところで小島が口を開いた。
「ほう、俺を殺せと。森め、偉く成りやがったもんだ。」
小島は恐れるどころか、どこと無く森陸軍中将の名を聞き、嘗て部下を懐かしがっている様だった。
「俺の事を森は何と言っていた。奴の事だ。国賊、反逆者、とでも言っていたのだろう。」
まさしくその通りだった。配島に命を伝えるとき、森は小島を「反逆者」と非難していた。
「彼奴は俺を勘違いしている様だ。俺は反逆者でも国賊でもない。陛下を騙し、国を滅さんとする新井田三吾に天誅を下す……国士だ!」
その声を合図に、小島の背後から三人、更に配島が入ってきたビル一階の出入り口から、四人の将校が飛び出し、忽ち配島は彼等に組み伏されてしまった。
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