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飛び出してきた将校の一団の中には、配島が知った顔が何人か居た。
陸軍省の竹下正彦中佐、新田源吾少佐、そして配島と所属を同じくする近衛師団参謀の古賀秀正少佐。
「こ、古賀少佐!何故貴方がぁっ!」
古賀は何も言わず、ただ配島を見下ろしている。
唖然とする配島に、新田少佐が声をかけた。
「悪いな、配島。恨むならば、貴様に密命をだした森閣下を恨むがいい。」
その言葉の意味を、配島は一瞬理解できなかった。しかし、自らの首に太い紐がかけられた時、全てを理解した。
「は…放せ!私が死ねば、森閣下が本腰を入れて動き出す!そうなれば、貴方達は終りだ!」
配島の叫びも虚しく、首に巻かれた紐は、確実に彼の命を奪っていく。
「配島大尉、貴様は自殺ということで処理される。安心しろ。貴様の嫁の…京子…だったか?それと信男だな、息子の。すぐに貴様と会わせてやる。」
新田の言を聞き、配島は目を見開いた。
――止めろ、妻と息子には――
言葉を叫ぼうとしても、口から発する事が出来ない。
「ゔ、ごあ゙ぁ」
配島が口から発した最後の言葉。
それが何を言ったのかは、新田や小島らには分からない。
ただ一ついえるのは、配島陸軍大尉は、二度と動き出す事が無いと言うことだけであった。
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