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――どうしてだよっ!
黒髪の少年は舌打ちをして、道端に落ちていた小石を思いっきり蹴った。
どうして
たかがくじ引きで
たかが村長の一言で
姉貴の生死を決められなければならない?
「アンシェル」
優しい声がかかる。
少年――アンシェルは後ろを振り返った。
「……エリック」
エリックという青年は、微笑みを称えてそこに立っていた。
しかし、その笑顔は
今にも泣きそうで
とても悲しそうで
「エリックはさ、悲しくないのか!?
人が――姉貴が死ぬんだぞ!?婚約者だろうが!」
――悲しいに決まっている。
答えは
ちゃんと分かっていたけど
「悲しいよ。
でも、“世界の為”……だから」
そう言った彼の言葉は、いつか習った“世界樹の歴史”の事を記憶の海の中から引張り出した。
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